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2018年07月23日
労働委員会事務局
〔別紙〕
命令書の詳細
1 当事者の概要
- 申立人組合(以下「組合」という。)は、本件申立時の組合員が約120名であり、被申立人会社(以下「会社」という。)らの従業員により組織された労働組合である。
- 会社は、平成17年2月1日、Y2株式会社Y3営業所の会社分割により設立され、一般乗用旅客自動車運送事業を営む株式会社である。
2 事件の概要
- 組合と会社とは、26年6月17日、労働者供給に関する基本契約を締結し、会社は、同契約に基づいて、定年者につき、組合との労働者供給契約を締結し、定年者との雇用契約を締結・更新するなどしていた。
- 東京地方裁判所は、27年1月28日、Y4株式会社(会社とは別法人。以下「Y4」という。)を被告、同社の従業員を原告とする訴訟において、被告の賃金規則の歩合給計算方法は無効であるとして、被告に未払賃金等の支払を命じた(以下「別件1)東京地裁判決」という。)。
- 会社は、Y4と同じタクシー乗務員賃金規則(以下「旧賃金規則」という。)を採用していたが、別件1)東京地裁判決を踏まえ、5月12日、旧賃金規則の改定に同意する旨の多数組合の決議があったことを確認した上で、規則を改定することを組合に通知し、18日、改定後のタクシー乗務員賃金規則(以下「本件賃金規則」という。)を施行した。
- 組合は、5月20日、会社に対して、団体交渉を申し入れ、数度にわたって団体交渉を行ったが、合意に至らないため、別件1)東京地裁判決と同様の訴訟を提起することを決議し、組合員らに提訴者を募った。
- 28年1月12日、組合員らは、会社を被告として、別件1)東京地裁判決と争点を同じくする未払賃金請求訴訟を提起した(以下「本件訴訟」という。)。
- 会社は、本件訴訟の原告である組合員X1ら12名が定年や契約期間満了を迎える際に、雇用契約を締結しなかった(以下、会社が組合員との間で雇用契約を締結しなかったことを「本件再雇用拒否」という。)。
- 本件は、1)組合員X1ら12名について、本件訴訟の提起を理由に本件再雇用拒否をしたこと(以下「争点1」という。)、2)旧賃金規則改定に関して、多数組合と比して取扱いが異なること(以下「争点2」という。)、3)旧賃金規則改定を議題とする団体交渉において、ア)不利益の程度等を把握するための賃金計算用のシートを27年7月7日まで交付しなかったこと(以下「争点3 1)」という。)、イ)本件多数組合との合意内容を押し付ける対応に終始したこと(以下「争点3 2)」という。)、4)未払賃金を議題とする団体交渉において、具体的な回答や紛争解決手段を提示しなかったこと(以下「争点4」という。)、以上の各事実が認められるか、認められるとして不当労働行為に該当するか否かが争われた事案である。
3 主文の要旨
- X1、4ないし8及び10ないし12につき、雇用契約を締結したものとして取り扱い、タクシー乗務員に復帰させるまでの間の賃金相当額を支払え
- 会社は、今後、従業員の労働条件の変更するに当たり、多数組合と申立人組合とを差別して取り扱ってはならない
- 文書の掲示
- 1.及び3.の履行報告
4 判断の要旨
- 本件訴訟の提起を理由に、本件再雇用拒否をしたといえるか(争点1)
- 1)会社の社長が本件訴訟を提起したことにより本件再雇用拒否をした旨の発言をする等しているため、他にこれを覆す特段の事情がない限り、会社は、本件訴訟を提起したことを理由に本件再雇用拒否をしたと認めるのが相当である。
- 2)上記「特段の事情」が認められた組合員について
ア X2は、1年間のうち、合計約8か月間も出勤していなかった上、契約期間満了の時点でも出勤していなかったのだから、会社がX2が長期間出勤していなかったことを理由に本件再雇用拒否をしたと認めるのが相当である。
イ 組合及び会社は、契約を更新できる上限を75歳と認識していた。そうすると、会社がX3及びX9について本件再雇用拒否をしたのは、両名が75歳であったためであると認めるのが相当である。
- 3)以上より、会社が、X1、X4、X5、X6、X7、X8、X10、X11及びX12について本件再雇用拒否をしたことは、組合活動を理由とした不利益取扱い及び支配介入に当たる。
他方、会社が、X2、X3及びX9について本件再雇用拒否をしたことは、不利益取扱い及び支配介入には当たらない。
- 本件賃金規則への改定の際、組合間の取扱いの中立性を欠いていたか(争点2)
会社は、多数組合に本件賃金規則を提案しつつ、組合に対しては、何ら提案をせず本件賃金規則に改定し、同規則の内容及び施行日のみを通知している。このような会社の対応は、労働組合間の取扱いの中立性を欠き、支配介入に当たる。
- 7月7日まで賃金計算用のシートを交付しなかったことの不誠実性(争点3 1))
会社が比較的短時間で賃金計算用のシートを交付していること、組合は、団体交渉で賃金計算用のシートを基にした要求を行っていないことなどを踏まえると、この点に関する会社の対応は、不誠実であったとまでいうことはできない。
- 賃金規則改定に関する団体交渉の不誠実性(争点3 2))
- 1)会社が提案している労働協約の締結には応じられないという組合の立場を踏まえると、まずは、組合側から具体的な問題点の指摘等を行うべきである。
会社から協定書の締結に向けて積極的に説明や説得を行わなかったからといって、会社の対応が不誠実であるということはできない。
- 2)会社は、組合に対して賃金計算用のシートを交付しているので、組合の提案に対し、減額箇所を明示するよう求めたことも不誠実ということはできない。
そして、X11は、賃金を計算した資料を提出すると述べたものの、資料を提出せず、賃金規則の改定に関する団体交渉の申入れをした事実も認められない。
- 未払賃金訴訟に関する団体交渉の対応が不誠実といえるか(争点4)
別件訴訟が確定していない段階で、訴訟の結論が出てから協議したいという会社の回答には合理性があり、会社の対応が不誠実であるということはできない。
5 命令書交付の経過
- 申立年月日 平成28年2月19日
- 公益委員会議の合議 平成30年6月5日
- 命令書交付日 平成30年7月23日
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