2018年10月05日
環境局
〔別紙〕
東京都環境影響評価制度の見直しについて
答申 概要
1 環境影響評価制度について
事業者が大規模な開発事業などを実施する際に、あらかじめ、その事業が環境に与える影響を予測・評価し、その内容について、住民や関係自治体などの意見を聴くとともに専門的立場からその内容を審査することなどにより、事業実施による環境への影響をできる限り少なくするための一連の手続の仕組みである。
2 制度見直しの背景・経緯
都は、環境影響評価法の成立に先駆けて、東京都環境影響評価条例を昭和55年に制定した。環境影響評価制度(以下「本制度」という。)の創設から37年が経過し、高度成長期以降に整備した、今後、更新期を迎える施設の増加が見込まれるなど、本制度を取り巻く状況に変化が生じている。
現行の本制度には、施設の更新について規定がなく、これまで新設等の規定を適用して運用してきたが、更新の要件を明確化するなど、より適切で分かりやすいものに見直す必要がある。
こうした背景から、東京都環境影響評価審議会は、都知事から東京都環境影響評価制度の見直しについて諮問を受け、このたび、これまでの議論を答申として取りまとめた。
3 環境影響評価制度の課題と見直しの方向性
(1) 施設更新時等の手続の明確化
1)施設の更新の定義等の明確化
- 現状と課題
- 施設の更新について規定がなく、新設等の規定を適用して手続を実施してきた。施設の更新は、解体工事の影響を含めれば、新設以上の環境への影響を及ぼすおそれがあるなどの理由から、更新が本制度の対象となることを明確にする必要がある。
- 今後の方向性
- 更新の定義を新たに定める。
- 更新の要件を対象事業の種類ごとに新たに定め、その規模要件は、これまでと同様に新設等と同規模で定める。
- 道路や鉄道等の更新は、環境への影響を考慮し、高架又は橋梁の橋脚、橋台又は桁の除却を伴う場合を対象事業とし、改築や改良の規模要件と同規模で定める。
2)更新以外の対象事業の内容についての見直し
- 現状と課題
- 鉄道等の改良は、本線路の増設のほか地下移設や高架移設等を対象とする一方、道路の改築については、車線増のみで移設は含まれていない。
- 送電線路(鉄塔)も移設の規定がない。
- 今後の方向性
- 更新と同様に環境への影響を及ぼすおそれがある道路の地下移設や高架移設等を、道路の改築の定義に含める。
- 送電線路(鉄塔)の移設についても新たに規定する。
(2) 事業内容等変更時の手続要件の明確化
- 現状と課題
- 変更届は、軽微な変更の場合、届出を不要としているが、その要件について具体的な定めがない。事業者に一定の負担を伴う手続であり、要件の明確化が必要である。
- 今後の方向性
- 変更届は、都が変更内容を正確に把握し、環境に著しい影響を及ぼすおそれがあるときは手続の再実施を求めるなど、適正な手続の実施に欠かせない。変更届の意義を踏まえ具体的な要件を新たに設定する。
(3) 事業者のより主体的な手続の実施
- 現状と課題
- 審議会への説明は全て都が対応しているが、制度の趣旨からすれば、事業者も説明責任を果たすべきである。
- 今後の方向性
- 審議会は、審議会への出席、審議会での説明を事業者に求めることができる旨を新たに規定する。
(4) 氏名等の公表に係る条例規定の見直し
- 現状と課題
- 他の自治体では、手続違反があれば勧告等を行い、それでも是正されないときは、氏名等の公表をするのが一般的だが、都では勧告等の定めがない。
- 今後の方向性
- 氏名等の公表前に、必要な措置を講じるよう勧告する旨を新たに規定する。
(5) 環境影響評価図書の公表方法の見直し
- 現状と課題
- 図書の公表は紙媒体が中心で、ウェブサイトでの公表は概要のみである。
- 今後の方向性
- ウェブサイトに図書の全文を掲載するなど積極的に図書を公表する。
(6) 更なる制度改善に向けて
今回検討した事項以外にも、「計画段階環境影響評価制度の見直し」、「自主的な環境影響評価制度の導入」、「対象事業の種類や要件の見直し」は、本制度の更なる改善に向けた重要な課題であり、本格的な検討を進めていく必要がある。