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2019年01月29日 労働委員会事務局
〔別紙〕
被申立人会社は、東京都墨田区に本社を置く株式会社である。主として、油井管継手と掘管の製造等を行ってきたが、平成28年3月31日をもって全ての製造事業から撤退した。
27年12月8日、会社は、支部に対し、28年3月末で製造事業から撤退すること(以下「本件事業撤退」という。)、従業員に対し希望退職を募ること、希望退職者には割増退職金を支払うことを説明し、同月11日以降、団体交渉が実施された。団体交渉を重ねる中で、組合は、組合員の雇用及び仕事の確保のための協議を進めようとしたが、会社は、製造事業からの撤退を前提とし、組合に希望退職に応ずるよう求めた。
会社は、団体交渉に参加する組合員の数を制限するよう求めたり、組合が支部組合員や上部団体の構成員以外の者も参加する集会を社屋内の食堂で行ったことを受け、支部組合員や上部団体の者以外の者が会社の敷地に入ることを制限するなどした。
また、会社は、製造事業から撤退し、従業員の大半が退職した後の28年4月18日から、守衛の配置時間外となる20時以降の組合事務所の使用を認めないこととした。
そして、会社は、組合員に希望退職に応ずるよう説得するため、4回にわたり個別面談を行ったほか、9月30日付けで支部組合員8名を解雇し、その後、自家用車等での組合員の入構を禁じたり、組合事務所外にある娯楽室の組合掲示板を移設するよう求めるなどした。
本件は、1)会社の製造事業からの撤退、組合員の雇用維持、28年度の賃上げ及び組合による金銭解決案の提示に係る団体交渉における会社の対応が不誠実であったか否か、2)会社が、組合の団体交渉参加人数について行った申入れが、支配介入に当たるか否か、3)会社が、組合に対し、支部組合員及び上部団体構成員以外の部外者が承諾なく会社敷地内に立ち入ることを控えるよう申し入れたことが、支配介入に当たるか否か、4)会社が、組合事務所の使用時間を制限したこと、事前に利用日等を届けない限り組合事務所の使用を認めないとしたこと、組合事務所の使用に当たり、車等での会社への入構を禁じたことが、それぞれ支配介入に当たるか否か、5)会社が、組合から申入れのあった就業時間内の面会を認めなかったことが、支配介入に当たるか否か、6)会社が、組合に対し、娯楽室内に設置されていた組合掲示板を移設するよう求めたことが、支配介入に当たるか否か、7)会社が、組合員に対して、個別面談を行い、退職勧奨したことが、支配介入に当たるか否か、8)会社が支部組合員8名を解雇したことが、組合員の組合活動を理由とした不利益取扱いといえるか否かが争われた事案である。
文書交付
会社は、組合の過激な言動、参加人数の差等を理由に、組合に対し、複数回、団体交渉への参加人数を絞るよう求めた。
しかし、組合の参加人数は従前と変わらず団体交渉が継続して行われており、会社が組合の参加人数を絞ることを団体交渉開催の条件として固執したとか、このために団体交渉が暗礁に乗り上げたような事情は認められず、会社は飽くまでも要請をしたにとどまっているといえる。
したがって、支配介入に当たるとはいえない。
労使協定には、組合の集会等のために、会社が会社会議室の使用を認めることがある旨の定めはあるが、これまでに組合の集会等のために支部組合員及び上部団体構成員以外の者が会社敷地内に立ち入っていたという事実を認めるに足りる疎明はなく、また、かかる立入りを認める労使協定等の締結の事実も認められない。
組合は、27年12月29日の「X2支部緊急激励集会」は、会社も支援者が入構することも含め、集会の趣旨を理解した上で、食堂の使用を承諾していたと主張する。しかし、会社が、支部組合員及び上部団体構成員以外の者が組合事務所に立ち入ることまで了承していたと認めるに足りる疎明はなく、組合の主張は採用することができない。
したがって、会社の組合に対する申入れには相当な理由があるというべきであって、この申入れが支配介入に当たるとはいえない。
就業時間内に工場長等に申し入れて支部組合員と上部団体構成員との面会が行われていたことは、団体交渉において会社も認めている。
しかしながら、労使間にこのような就業時間内の面会を認める労使協定等が締結された事実は認められない。また、組合が、これまでも面会をするに当たり、工場長等に申入れを行っていたことや、就業時間内の面会は認めないことを原則としており、過去に認めた例外は申出を受けてその都度判断していたという会社の認識に合理性が認められることからみても、会社が就業時間内の面会を当然に認めるという合意形成がなされ、労使がその合意に従い行動していたとか、労使慣行が成立していたと認めるに足りる事情はない。
したがって、会社の対応が労使間の合意や労使慣行に反するということはできず、後に組合が実績と主張する範囲内で会社が面会を許可していることも考慮すると、会社が、就業時間内の面会を認めなかったことが支配介入に当たるとはいえない。
会社は、支部組合員の解雇後、立入りを認めていない娯楽室内の組合掲示板を使用しないよう求めたものであり、組合員が組合事務所以外の施設に立ち入れなくなったのは従業員としての身分を失ったからであるという理由には合理性が認められる。そして、会社は、団体交渉での協議も経て、組合の要求を踏まえて、組合掲示板を組合事務所の入口前に移すという代替案を提案している。組合は、組合事務所の入る建物の出入口の横への移設を求め、会社の代替案を受け入れておらず、従前のとおり、組合掲示板を使用している。
このような状況も踏まえると、会社が組合掲示板の移設を組合に対して求めたことをもって、支配介入と評価することはできない。
個別面談は、組合が、団体交渉の席で、組合員は希望退職には応じない旨を繰り返し明らかにし、会社に対する書面でも、組合員への個別面談を行わないことを強く要求していた中で行われた。また、支部の執行委員長も個別面談において、団体交渉で話をするよう抗議している。
会社は、組合員に個別面談を行った理由として、希望退職者に対する優遇措置について、団体交渉で説明しようとしても、組合がこれに応じなかったので、希望退職の条件も含め、組合員と非組合員の別なく説明及び情報提供を行うべきと考えたと主張する。しかし、説明や情報提供が目的であれば、説明会の開催に加え、組合や組合員の反対を押し切ってまで個別面談を4回も実施する必要はない。
そうすると、会社が希望退職に応じなかった組合員に対して、4回にわたり個別面談を実施したことは、組合の頭越しに個々の組合員に対して希望退職に応ずるよう直接働き掛けるものであったといわざるを得ず、支配介入に当たる。
会社が解雇したのは支部組合員8名であるが、会社は、本件事業撤退に伴い、経理担当の1名を除き、組合員を含む従業員の全員を退職させる方針を採っていた。また、この1名は経理担当者であり、業務の必要により解雇とならなかったものであるから、組合員でないことを理由とするものではない。そうすると、会社が組合員を排除するために支部組合員8名を解雇したものとみることは到底できないし、また、会社が組合を嫌悪して、本件事業撤退を行ったとみることもできない。
したがって、この解雇が、組合活動を理由とした不利益取扱いに当たるとはいえない。
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