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2019年03月04日 労働委員会事務局
[別紙]
団体交渉に先立って、Y1として法学部執行部の教授が出席する本件事務折衝が行われた。第2回事務折衝では、組合が、一連の行為についてX2が謝罪文を提出することで平成28年度の雇用を認めるよう求めたのに対して、Y1は、謝罪文の内容は信頼回復には不十分であり、今後信頼回復の措置が執られるのであれば、28年度の雇用は無理であるが、29年度の雇用を検討する余地はある旨を説明した。また、組合が事務折衝の継続を求めたのに対して、Y1は、団体交渉による交渉を求めた。本件においては、このような経緯があることを十分に考慮する必要がある。Y1には、上記経緯を踏まえた上で交渉が継続できるような対応が求められていたものというべきである。
Y1は、第1回及び第2回の団体交渉では、X2の雇止め理由について、法学部の判断を支持するという結論を述べるだけで、「教育機関として妥当と判断した」、「一連の総合的な判断を支持した」等の抽象的な説明を繰り返し、法学部が、本件事務折衝の経過を踏まえた上で、X2との信頼関係を回復できず、同人を雇止めにすると判断するに至った具体的な根拠等について、何ら回答していない。また、Y1は、第3回の団体交渉において、X2の雇止めの理由と謝罪文の評価について回答したものの、雇止め決定プロセスや29年度のX2の雇用に係る組合の質問には明確な回答をしておらず、信頼関係の回復についての議論になることもなかった。
本件事務折衝において、Y1が、今後信頼回復の措置が執られるのであれば、29年度の雇用を検討する余地がある旨説明していたことからすれば、X2の29年度の雇用に向けた適時の交渉が必要であった。それにもかかわらず、本件団体交渉におけるY1の上記対応は、組合と法学部が事務折衝を重ねて詰めてきた議論を後戻りさせるものといえ、事務折衝の経緯を踏まえた上で交渉が継続できるような対応であったとは到底いうことができない。Y1は、法学部の教授を出席させるか、又は、法学部から十分な説明を受けた理事を出席させ、事務折衝の経緯を踏まえた上での交渉に努めるべきであったといえる。
したがって、本件団体交渉におけるY1の対応は、不誠実な団体交渉であったといわざるを得ない。
Y1は、28年10月3日付け及び11月28日付けの回答書において、1)第2回及び第3回団体交渉において、法学部教授会決定に至るまでのプロセスを十分説明しており、これ以上団体交渉を重ねても、Y1の回答に変化はないこと、2)Y1としては、組合が今後の要求の趣旨や争点を明らかにせず、漫然と従前の要求を繰り返す限り、当面団体交渉に応じるつもりはないことを回答している。これは、要求事項について交渉の余地はなく、団体交渉が行き詰まっていることを理由に、組合が従前の要求事項を繰り返す限り、団体交渉に応じる必要がないとの意思を示したものと解釈するほかなく、団体交渉を拒否したものといえる。
そして、前記⑴で判断したとおり、本件団体交渉において、Y1は誠実交渉義務を尽くしておらず、団体交渉が行き詰まりの状態に達していたとは認められないから、Y1が組合の28年9月19日付及び11月11日付団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。
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