2020年12月17日
生活文化局
「高齢者と複数店舗間のアクセサリー等の過量販売契約に係る紛争」は4社があっせん解決、1社があっせん・調停不調となりました
(東京都消費者被害救済委員会報告)
都内の消費生活センターには、高齢者に対する「次々販売」や「過量販売」に係る相談が毎年多数寄せられています。
過量販売の考え方や、消費者と密接な人間関係を築きその関係性を利用して勧誘するなどの過量販売の背景にある問題点を整理して、今後の同種・類似被害の解決に役立てるため、都は、東京都消費者被害救済委員会(会長 村千鶴子 弁護士・東京経済大学現代法学部教授)に標記紛争の解決を付託していました。本日、同委員会から4社があっせん解決、1社があっせん・調停不調により終了したと知事に報告がありましたので、お知らせします。
紛争の概要
- 申立人 1名
80歳代後半の女性(年金生活者)
- 相手方 5社
A社:アクセサリー販売業者
B社:アクセサリー販売業者
C社:アクセサリー販売業者
三結商事合同会社 東京都練馬区中村北一丁目10番17号
D社:呉服販売業者
E社:芸術作品展覧会業者
- 申立人の主張による紛争の概要
数年前より、複数の事業者から勧誘を受け、アクセサリーや呉服等を多数購入している。商品は店頭払いの分割で購入しており、事業者の店舗に支払いに行くと、新たな商品を勧められる。「お金がない。」と何度も断っているが、長年つきあいのある販売員から購入を促されると、断れない雰囲気になり、結局購入してしまう。預貯金は底を尽き、年金収入だけでは払えない。要介護の認定を受けた夫と賃貸マンションに二人暮らしで子供や頼れる親戚、近隣の人もいない。契約を解除して返金してもらいたい。
あっせん・調停の結果 4社があっせん解決、1社があっせん・調停不調
A社、B社、E社の契約は、改正により新設された消費者契約法第4条第4項に規定する過量販売に該当し、施行日の平成29年6月3日以降の契約は取り消すとした合意が成立しました。
C社(店舗外販売)、D社(アポイントメントセールス【注】)は、特定商取引法の訪問販売に該当し、いずれも契約書に不備があったことから、クーリング・オフによる解決を目指しました。D社はあっせん解決となりましたが、C社はあっせん案、調停案に同意しませんでした。よって、委員会は、C社については、あっせん・調停不調として処理を終了しました。
【注】アポイントメントセールスとは販売目的を明示せずに電話や郵便などで店舗等に呼び出し契約させること。
高齢者と周囲の方へのアドバイス 高齢者を孤立させないで
周囲の方へ
高齢者を狙う事業者は、高齢者が孤立している状況を利用して、定期的に会うなど高齢者に「寄り添い」、密着することで、次々に高額な契約を締結させます。周囲の見守りや普段からの人間関係を大切にし、高齢者を孤立させないようにしましょう。
高齢者の方へ
楽しい集まりでも契約を断りにくい雰囲気の場所には行かないようにしましょう。生活に必要のないものは雰囲気に流されずきっぱり断りましょう。断り切れずに契約してしまった場合は、一人で悩まずに消費生活センターに相談しましょう。消費者ホットライン188に電話すると、お近くの消費生活相談窓口につながります。
本件のポイント
- 生活必需品とはいえないアクセサリーなどの商品や趣味に関係する役務であっても「過量販売」に該当する場合は、消費者が過量販売であることを知ってから1年以内、契約から5年以内であれば、消費者契約法の規定により契約を取り消すことができます。なお、契約から1年以内の訪問販売や電話勧誘販売の場合は特定商取引法の規定による契約解除が可能ですが、訪問販売のC社、電話勧誘販売のE社について契約から1年が経過していました。
- 特定商取引法によるクーリング・オフは無条件で契約を解除できることから、過量販売の場合でも、まず、クーリング・オフについて検討しました。特定商取引法では、契約書に記載不備がある場合は、クーリング・オフ期間を過ぎていても、クーリング・オフが可能なことから、C社の契約はクーリング・オフにより契約解除することとしました。
- 本件「過量販売」の背景には、事業者が、高齢者たちを定期的に集めてお茶やお菓子をふるまい、一種の社交場として孤独をなぐさめるような環境を提供し、その状況を利用して事業者こそが高齢者のよき理解者であるとアピールしつつ、言葉巧みに、次々と契約締結させる「寄り添い型勧誘」という勧誘手口がありました。
東京都消費者被害救済委員会における審議の概要
東京都消費者被害救済委員会は、都民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのある紛争について、公正かつ速やかな解決を図るため、あっせん、調停等を行う知事の附属機関です。
主な問題点
1 嗜好品であっても当該消費者にとって過量と判断される消費者契約は取り消せる。
一般的に、アクセサリーや芸術作品の展覧会への出品など嗜好性のある商品や役務の過量性を販売数量だけで判断することはできない。しかし、A・B・C・E各社は、年金で支払うしかないという申立人の経済状況を知りながら、申立人との契約を繰り返していたことや、申立人は契約当時80歳代後半でその生活状況において、これらの契約を自ら希望していたわけではなく、事業者らに勧められるままに購入していたことなど、経済状況、生活状況等を総合的に勘案し、本件は、消費者契約法第4条第4項に規定する過量販売に該当すると判断した。
2 高齢者に対する長期の金銭負担を求める自社割賦による販売は問題である。
本件相手方5社は契約の多くを、クレジット会社等を介さずに販売業者に直接分割払いする自社割賦で支払わせていた。高齢者には年金という安定した収入があるから支払能力はあるといった認識の事業者もあり、契約締結に際しては資力・収入等の支払能力について裏付証拠の提出を求めるなどの調査はしていなかった。契約期間が長期に及ぶ割賦販売では支払途中に予測できない事態に陥る可能性もあることから、事業者、消費者とも慎重であるべきである。
同種・類似被害の再発防止に向けて
1 事業者に対して
- 事業者の責務を定めた消費者基本法第5条に「消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること」とあるとおり、適合性原則に配慮すべきである。
- 過量販売はしてはならない。過量販売は、特定商取引法(訪問販売・電話勧誘販売)では禁止行為とされ業務停止命令等の対象となり、消費者契約法では適格消費者団体の差止訴訟制度の対象とされている。過量販売につながる「寄り添い型勧誘」はやめるべきである。
- 高齢者にとって年金は貴重な生活資金であり、割賦販売において年金を支払能力として考慮すべきものではない。生活破壊につながる支払能力を超えた割賦販売はすべきではない。
2 行政に対して
- 高齢者に対する次々販売などの被害事例について情報を集積し、高齢者自身や高齢者を見守る周囲の人に、広く情報提供することが重要である。高齢者の消費者被害防止のため、見守りネットワークの構築支援と福祉行政との連携推進を求める。
- 消費生活相談では、被害の救済と新たな被害防止のため、専門的知見をもって丁寧に聞き取り、適切な助言をすることが重要である。そのためにも研修の充実は必要である。
- 割賦販売法の改正により個別クレジットに対する規制が強化された2008年以降、悪質業者は個別クレジットから自社割賦を利用した販売に移行している。自社割賦についても、支払能力を超えた契約の勧誘や締結を禁止するなどの実効性のある規制の導入を求める。
本件の詳細は報告書(PDF:3,259KB)をご覧ください。
詳しくは「東京くらしWEB」をご覧ください。
問い合わせ先
東京都消費生活総合センター活動推進課
電話 03-3235-4155 |