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報道発表資料  2021年01月28日  建設局, (公財)東京動物園協会

ジャイアントパンダの繁殖期の対応について

恩賜上野動物園(園長 福田豊)は、令和2年12月26日から令和3年2月7日まで、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため臨時休園しています。当園で飼育しているジャイアントパンダの繁殖期が近づいてきたため、今後、発情の兆候が見られた場合は速やかに交配などに向けた環境を整えられるよう、準備を進めてまいります。
つきましては、繁殖期の対応についてお知らせいたします。

1.対象動物

ジャイアントパンダ

リーリー(オス)
2005年8月16日 臥龍保護センター生まれ
シンシン(メス)
2005年7月3日 臥龍保護センター生まれ

ジャイアントパンダ(シンシン)の写真

ジャイアントパンダ(シンシン)

ジャイアントパンダ(リーリー)の写真

ジャイアントパンダ(リーリー)

2.繁殖について

ジャイアントパンダの繁殖期は一般的には年1回、2月から5月にやってきます。この期間中にメスの妊娠の可能性が高まるのは数日間だけです。
当園では自然繁殖をめざしており、メスの交配適期を見極め、交配のための同居を行う予定です。

3.繁殖期の対応

繁殖期のシンシンの行動などを確認しながら、以下の対応をしてまいります。

1)同居の実施について

交配のため、リーリー(オス)とシンシン(メス)の同居を数日の間に複数回実施する予定です。

2)展示について

開園中に発情の兆候が見られた場合、パンダが繁殖に集中できる落ち着いた環境を整えるため、西園「パンダのもり」ジャイアントパンダ舎及びキジ舎周辺の立入り規制を行います。これにより、リーリーとシンシン及びキジ類の展示は中止となります。ご理解・ご了承のほど宜しくお願いいたします。
なお、シャンシャンは東園のパンダ舎で展示を継続します。

西園「パンダのもり」 ジャイアントパンダ繁殖期規制エリアの図

西園「パンダのもり」 ジャイアントパンダ繁殖期規制エリア

※動物の健康状態などの理由により、レッサーパンダ舎を含む「パンダのもり」全域を立入り規制する場合や、シャンシャンなど他の動物の展示を中止する場合があります。予めご了承ください。
※新型コロナウイルス感染症の流行状況によっては、臨時休園期間を延長する場合があります。

4.展示にかかる告知

開園中にシンシンの発情が強まった場合、別途リーリーとシンシンなどの展示中止のお知らせを行います。その後の展示の有無については恩賜上野動物園ホームページ(東京ズーネット)(外部サイトへリンク)や恩賜上野動物園公式ツイッター、入園門への掲示でご案内します。ご確認のうえ、入園に必要な整理券の事前予約をお願いいたします。
臨時休園期間中に発情の兆候が見られた場合は、別途お知らせします。

5.現在の状況

リーリーは、逆立ち排尿やマーキング、体のこすりつけの回数が増えたり、シンシンの部屋や放飼場に入る際に床やシンシンの排泄物のにおいをかいだりするなど、発情期によく見られる行動があらわれています。
なお、シンシンには今のところ発情期特有の鳴き声や、体の一部を冷やすなどの行動の発現、尿中ホルモン値の顕著な変化など発情を示す兆候は見られていません。

6.シャンシャンを出産した平成29年(2017年)の経過

【発情期】

平成28年
12月8日頃 オス(リーリー)に繁殖期に見られる行動があらわれる

平成29年
2月15日頃 メス(シンシン)にも発情兆候が見られ始める
2月22日 展示中止
2月27日 同居実施、交尾行動を確認
2月28日 メスの発情が収束に向かう
3月1日 展示再開を報道発表
3月2日 展示再開

【交尾後】

5月16日頃 シンシンの採食量減少、休息時間の増加などの変化が見られ始める
5月20日頃 尿中のホルモン代謝物に変化が見られる
5月25日 出産に向けシンシンの展示を中止
6月12日 出産

7.撮影について

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、園内での撮影についてはご遠慮いただいています。
ジャイアントパンダに関する近況報告は、定期的に恩賜上野動物園ホームページにてご報告しています。提供している画像・映像の使用ご希望の際は、上野動物園教育普及課へお問い合わせください。
なお、展示を中止した場合、ジャイアントパンダに関する状況報告については別途お知らせいたします。

参考

ジャイアントパンダ(食肉目 クマ科)

(ワシントン条約附属書1、IUCNレッドリスト:VU(絶滅危惧2類)、東京都ズーストック種)
※「附属書1」「2類」の数字の正しい表記はローマ数字です。

  • 学名
    Ailuropoda melanoleuca
  • 英名
    Giant panda
  • 分布
    中国南西部(四川省、陝西省、甘粛省)の標高2600~3500メートルの寒冷湿潤な竹林
  • 生態等
    基本的には単独行動で行動圏5~15平方キロメートル、昼夜の別なく行動するが明け方と夕方が活発です。

ジャイアントパンダの繁殖などに関する一般的傾向について

  1. 性成熟
    性成熟はオスで6.5~7.5歳、メスで3.5~4.5歳。
  2. 繁殖期
    繁殖期は一般的に2~5月。秋に発情するケースもある。繁殖期には、行動量の増加、においつけ、水浴びによる体冷やしの増加、食欲減退、恋鳴きなどが見られる。発情期間は2週間ほどであるが、そのうち受精できるのは数日間だけある。
  3. 妊娠期間
    交配後、83~200日の妊娠期間を経て出産する。妊娠期間は個体差がある。これは、着床遅延【注1】があるためで、受精してから着床するまでの時間が1日のものもあれば数週間かかるものもある。着床までの時間によって妊娠期間が変わる。
  4. 妊娠時に認められる変化
    1. 食欲の変化:出産の30日前頃から食欲が減退し、餌を残すようになる。出産間際には食欲が廃絶する。
    2. 行動の変化:出産の15日前頃から巣づくり行動が認められる。出産間際には行動が不活発になる。
    3. 体の変化:出産の30日前頃に乳頭が確認されるようになる。出産間際には陰部の腫脹、乳房の腫脹が認められる。
    4. ホルモンの変化:出産前の3.7週~8週に尿中のプレグナンジオール(妊娠の維持に必要な黄体ホルモンが代謝された物質)値の上昇が認められる。出産間際にはこの数値が下がる(血液で検査した場合、プロゲステロン(妊娠に必要な黄体ホルモン)値が上昇する)。
  5. 妊娠の確認
    妊娠時に認められる変化により推測するが、偽妊娠【注2】という生理現象がみられるため、確定診断は難しい。

用語の説明

【注1】着床遅延(ちゃくしょうちえん)
受精卵がすぐに子宮内膜に着床せず、胚盤胞の状態でしばらくの間子宮内に浮遊し、それから着床・発育を始める現象。温・寒帯に分布するクマ類やイタチ類、鰭脚類、カンガルーなどに認められている。着床までの時間によって妊娠期間が変わる。

【注2】偽妊娠(ぎにんしん)
偽妊娠は病気ではなく生理現象の一種である。排卵すると、受精しなくても妊娠と同じ経過をたどることが知られている。発情の後、妊娠しなくても、尿中ホルモン値の上昇、動作の不活発、長い休息時間、食欲不振、乳頭の明瞭化、乳房の腫脹、巣作り行動など妊娠した場合と同様の現象が現れる。これを偽妊娠と呼ぶ。出産することがないまま日数が経過し、上記の変化が認められなくなって終息する。

参考文献

  • 张志和・魏辅文著『大熊猫 迁地保护 理论与实践』(ジャイアントパンダ 域外保全 理論と実践)、科学出版社(中国)、2006年
  • 東京都恩賜上野動物園編『ジャイアントパンダの飼育 上野動物園における20年の記録』、東京動物園協会、1995年
問い合わせ先
(公財)東京動物園協会
恩賜上野動物園
電話 03-3828-5171(代表)17時00分まで
恩賜上野動物園教育普及課
電話 03-3822-5811
建設局公園緑地部管理課
電話 03-5320-5365

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