2023年11月01日
労働委員会事務局
N事件命令書交付について
当委員会は、11月1日、標記の不当労働行為救済申立事件について、命令書を交付しましたのでお知らせします。命令書の概要は、以下のとおりです(詳細は別紙(PDF:190KB))。
1 当事者
申立人
X(東京都三鷹市)
被申立人
Y1(東京都北区、通称:三鷹第一営業所)
Y2(東京都北区、通称:三鷹第二営業所)
2 争点
- (1)元年11月1日の団体交渉で組合がメーター検査手当の支給内容を労働協約として締結するよう要求したことに対し、団体交渉で会社がこれに応じられないと回答したことが、不誠実な団体交渉に当たるか否か(争点1)。
- (2)11月15日の団体交渉終了後、三鷹営業所長が組合書記長に対し、「担当車外し」に係る発言をしたことが、組合員に対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか否か(争点2)。
- (3)11月15日の団体交渉終了後、三鷹営業所長が組合書記長に対し、餅つき及び旗開きにおける酒類の提供は営業所外で行うよう言い渡したことが、組合に対する支配介入に当たるか否か(争点3)。
- (4)12月30日、三鷹営業所長が組合書記長に対し、「Z組合さんから出てくれば話は考えます。」、「大多数の方が認めているのに」、「協定書を結ぶまでの話じゃない。」などと述べたことが、組合に対する支配介入に当たるか否か(争点4)。
3 命令の概要<一部救済>
- (1)争点1について
11月15日の団体交渉において、メーター検査手当の運用について、組合と会社との認識が一致し、その運用を維持することが確認されたことを踏まえ、組合が相応の理由を示して文書化を要求したのに対し、会社は組合の要求理由に具体的に応えることなく、頑なに拒否する態度を示しており、そのことを正当化する会社の主張はいずれも採用することができないのであるから、メーター検査手当の運用の文書化に係る会社の交渉態度は不誠実な団体交渉に当たる。
- (2)争点2について
- ア グループでは、無線を取らない乗務員がいることについて、以前から問題視しており、無線了解率に応じた優先配車権付与施策などを導入していた。
また、元年11月13日には、無線戦略会議において、本社社長が、無線了解率を上げるために、無線を取らない人の担当車を外すくらいのドラスティックなことも考えるよう指示し、グループは、全社的施策として、無線を取らない乗務員の担当車を外す検討を重ねていた。
- イ 「担当車外し」が検討されていた当時、無線を取らない乗務員は全営業所の乗務員約5,000人中195人存在しており、その中には申立外Z組合(過半数組合)の組合員も含まれ、11月14日には、本社の労務部長がZ組合の本部役員に「担当車外し」の件を打診している。
以上のことから、会社が、組合やその組合員を狙い撃ちにして「担当車外し」発言を行ったとは認められず、そのほかに、会社による嫌がらせや直前の団体交渉における組合の姿勢に対する報復などの意図をうかがわせる事実も認められない。
- ウ したがって、11月15日の団体交渉終了後、三鷹営業所長が組合書記長に「担当車外し」に係る発言をしたことは、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いにも、組合の運営に対する支配介入にも当たらない。
- (3)争点3について
会社が、申立外Z組合から組合の旗開きのポスターについて苦情を受けてから、組合に営業所内での酒類の提供禁止を言い渡すまでの一連の対応の流れに不自然な点はなく、直前の団体交渉における組合書記長の発言への報復であるとか、組合に対する支配介入の意図に基づく行為であったとは認め難い。
会社は、Z組合からの苦情を受け即座に対応し、旅客自動車運送業を営む会社として社内で飲酒することは不適切であるとの考えに至り、社内ルールの運用を就業規則のとおりに改めることを言い渡したものであり、飲酒運転の厳罰化など社会情勢の変化を踏まえれば、会社の対応には相応の理由があり、酒類の提供の禁止を告げたことが、組合活動の弱体化を企図した行動であったとは認められない。
- (4)争点4について
- ア 三鷹営業所長の発言全体の趣旨は、多数の乗務員から労働協約の締結を望む声があれば考えるが、現時点ではその必要がないという見解を述べたものであって、組合をZ組合に比して差別的に取り扱う意思に基づいた発言であるとまでいうことはできない。
- イ また、三鷹営業所長は、組合書記長に声を掛けられたためこれに応じ、二人だけの非公式の場で、自己の認識を忌憚なく率直に述べたものと理解され、若干、不用意な発言が含まれていたとしても、そのことをもって、組合運営に対する支配介入であるとみることは相当でない。
- ウ したがって、12月30日の話合いにおける三鷹営業所長の発言は、組合活動に対する支配介入に当たるとまではいえない。
参考
命令に不服がある場合、当事者は次のいずれかの手続をとることができる。
- 中央労働委員会に再審査申立て(申立人及び被申立人15日以内)
- 東京地方裁判所に取消訴訟を提起(被申立人30日以内、申立人6か月以内
問い合わせ先
労働委員会事務局審査調整課
電話 03-5320-6979
電話 03-5320-6986
電話 03-5320-6988
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