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2018年07月02日 病院経営本部, 小児総合医療センター
小児の気道狭窄に伴う呼吸不全の原因疾患として、(1)上部気道狭窄(咽頭狭窄、喉頭狭窄、気管狭窄、気管軟化症、気管支狭窄症・軟化症)、(2)急性細気管支炎(重症例)、(3)クループ症候群(重症例)、(4)喘息発作重積状態などが挙げられます。これらの疾患を発症する乳幼児期の気道は細く、感染等を契機に狭窄病変が進行し急激かつ重篤な呼吸不全に陥りやすいです。
いずれの疾患においても内科的治療法については支持療法が主体であり、重症例では人工呼吸療法や体外式膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)による管理を要します。これらは、いずれも原疾患を根治するものではなく、時には治療に伴う合併症そのものが生命を脅かす場合もあります。
当該治験薬(ヘリウム・酸素混合ガス:AW-PD01)は、低密度で高い動粘性を有するヘリウムの物理的性質を利用して、狭窄した気道でも層流状態を維持することで気道抵抗を低下させ、換気量の増加や呼吸仕事量の減少をおこし、さらに、ガス拡散能を有しているためCO2の排泄を促進するとされています。気道狭窄に伴う呼吸不全に対する補助療法として、国内外の診療ガイドラインなどでは、ヘリウム・酸素混合ガスの使用を考慮する旨が記載されています。標準治療に不応な重症患者の救命につながったり、集中治療期間を短縮できたり、人工呼吸器合併症を減少できたりする可能性などが考えられており、小児の致死的な疾患群に対する個別の利益の総和は計り知れません。
図1 ヘリウム・酸素混合ガスの効果 |
適応となる患者数の見込みが1,000人ほどと非常に少なく、企業による開発が困難でした。一方で、上記のように医学的・社会的に効果について、現場からのニーズが高く、医師主導治験により当該治験薬の開発を進めることになりました。日本集中治療学会、および、日本小児救急医学会と連携して申請した「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、医療上の必要性の高い医薬品であると承認され、開発要請がかけられました。小児の気道狭窄に伴う呼吸不全に対して、人工呼吸療法等と併用できる有効性の高い治療法となる可能性があるヘリウム・酸素混合ガスの医薬品としての製造販売承認申請のための主たる臨床試験データの収集のため、当該治験薬の国内における安全性評価を目的とした本医師主導治験を実施します。
【注】 医師主導治験
平成14年7月の薬事法改正により、製薬企業等と同様に医師が自ら治験を企画・立案し、実施することが可能になりました。この治験の準備から管理を医師自ら行うことを医師主導治験といいます。医師主導治験では、治療に必要とされているにも関わらず、採算性の問題等で製薬会社が治験を実施できない薬や、既に承認されている薬の適応症を拡大することなどを目的に、医師が自ら治験の計画を立てて治験を実施します。
小児の気道狭窄病変に伴う呼吸不全に対するヘリウム・酸素混合ガス(AW-PD01)の第2相臨床試験
※第2相臨床試験の正しい表記はローマ数字です。
日本人小児の気道狭窄病変に伴う呼吸不全に対するAW-PD01の安全性を確認する
気道狭窄病変を有し、小児集中治療室で人工呼吸管理を要するもの
15例
2018年7月から2020年6月まで(予定)
人工呼吸器の酸素濃度調整機能を用いて設定し、投与開始時の吸入酸素濃度は40%(FIO2=0.4)、ヘリウム濃度(100%-吸入酸素濃度)は60%とする。被験者の状態が許せば、呼吸状態の改善に合わせて換気モードの設定を徐々に緩和していくとともに、吸入酸素濃度をFiO2=0.21~1.0、ヘリウム濃度(100%-吸入酸素濃度)は79~0%の範囲で調整する。被験者の状態が一定基準を満たした後、治験薬投与を終了し、抜管に至る。
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の臨床研究・治験推進研究事業(日本医師会)(研究代表者:清水 直樹(集中治療科 部長))により行っています
臨床研究登録(日本医師会):登録番号JMA-IIA00357
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