ここから本文です。
2024年09月02日 建設局, (公財)東京動物園協会
多摩動物公園(園長 渡部浩文)では、このたび世界初となるアズマモグラの繁殖が確認できましたので、お知らせします。なお、子は死亡して発見されています。
この繁殖状況の確認にあたっては、国立大学法人福島大学共生システム理工学類の兼子伸吾(かねこしんご)准教授のご協力をいただいております。
飼育下でアズマモグラの雌雄を同居させ、交尾から出産に至ったのは、世界的に見ても前例がありません。今回の繁殖では、残念ながら子は死亡して発見されていますが、地中に暮らし、未解明な部分が多いモグラの生態解明にむけた大きな成果です。
不明
2023年7月11日(火曜日)
1頭
メス
ナンバー236(年齢不明)
ナンバー234(年齢不明)
※捕獲にあたっては、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律に基づく許可を得ています。
死亡して発見されたアズマモグラの子
アズマモグラ飼育ケース
モグラは地下性の動物であり、繁殖を含む生態については未解明な部分が多くあります。飼育すること自体も容易ではなく、昨年出版された総説論文においても飼育下での繁殖例は世界的に見てもまだ無いとされています(Jiménez et al. 2023)【注】。
【注】The Biology and Evolution of Fierce Females (Moles and Hyenas). Annual Review of Animal Biosciences, 11(1) , 141-162.
多摩動物公園では、1998年からモグラ類の飼育を継続してきましたが、飼育下での繁殖には至っていませんでした。2022年より、あらためて飼育下でのアズマモグラの繁殖を目指して、落ち着いた環境で繁殖ができるように飼育ケースを複数用意したり、雌雄の同居の時期を限定したりするなどしてきました。ナンバー236(メス)とナンバー234(オス)の2頭については、断続的に同居を重ね、2023年3月6日以降は終日同居させていました。2023年7月11日に飼育ケースを確認したところ、メスの死体と生存個体2頭を発見し、飼育ケース内で繁殖したことが判明しました。なお、ナンバー236(メス)とナンバー234(オス)の同居を開始するまでは、10か月以上単独で飼育しているため、ナンバー236(メス)が野生で妊娠し、出産した可能性はありません。
生存個体2頭の性別を確かめるため、野生生物保全センターにてPCR法による性別判定をおこなった結果、生存しているのはオス1頭とメス1頭であるとわかりました(2023年12月21日)。これにより、生まれた子はメスであることが判明しました。
観察から、当初は死亡メスが母親(ナンバー236)、生存メスが子であると考えられたものの、確実な判断を行うため、アズマモグラの親子判定に実績のある福島大学の兼子准教授などとの協力により、野生生物保全センターで遺伝マーカーを用いた親子判定検査を行いました。その結果、死亡個体は生存オス(ナンバー234)と生存メスの対立遺伝子を受け継いでおり、当初の予想に反し生存メスは母親、死亡個体は子であることが判明しました(2024年7月5日)。
残念ながら、子の死亡が確認されたものの、飼育下で繁殖した事実は生物学的に貴重な知見であることから、福島大学と共同で発表するものです。
今回繁殖に成功した雌雄については、2024年8月31日現在、メスのみが生存しており、非公開の施設で飼育しています。
1頭(メス)
1園館 多摩動物公園のみ
資料:(公社)日本動物園水族館協会ホームページ飼育動物検索および当園独自調査の結果より
Mogera imaizumii
Small Japanese mole
東日本を中心に生息。四国、中国地方にも点在している。
里山から山地の土の中
体重は50-130グラムで個体による差が大きい。大きくて幅の広い前足を使って地中に網の目のような坑道(トンネル)を作ってくらし、地上に出ることはほぼありません。トンネルの中に落ちてくるミミズや昆虫などを食べる肉食動物で、土壌生態系の中で頂点に位置しています。繁殖期は春から初夏、産子数は2-6頭、寿命は野生では3年程度と言われています。一生を土の中ですごすため、生態については未解明なことが多い動物です。また、外見から雌雄を見分けることは困難です。
問い合わせ先 (公財)東京動物園協会 多摩動物公園教育普及係 電話 042-591-1611(代表 ※17時00分まで) Eメール tama_kouhou(at)tzps.or.jp 建設局公園緑地部計画課 電話 03-5320-5374 Eメール S0000380(at)section.metro.tokyo.jp ※迷惑メール対策のため、メールアドレスの表記を変更しております。 お手数ですが、(at)を@に置き換えてご利用ください。 |
Copyright (C) 2000~ Tokyo Metropolitan Government. All Rights Reserved.