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令和2年(2020年)2月19日更新
令和2年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を述べさせていただきます。
はじめに、新型コロナウイルス感染症への対応についてであります。都はこの間、危機管理対策会議の開催や対策本部の立ち上げなどを通じまして、各局及び関係機関と緊密に連携をし、迅速な対応に当たってまいりました。武漢市からの帰国者の一部を都立病院・公社病院へ受け入れるとともに、都民の皆様に向けた相談窓口や医療提供体制をいち早く整えたほか、国内に住居のない帰国者への都営住宅の一時提供、中小企業者等特別相談窓口の開設など、対策を幅広く講じております。
加えまして、国に対しましても、検査体制の強化や、マスクなど必要な資材の安定供給等について緊急要望を行いましたほか、現地での対策を支援するべく、中国各機関からの要請を踏まえまして、医療用防護服を提供いたしました。そして、本定例会には、感染症対策を強化するとともに、経済活動への影響を最小限に抑える観点から、さらなる取組を推進するための補正予算案を提案したところでございます。本予算案を、3月から来年度にかけて切れ目なく対策を行うための「13か月予算」とし、検査体制の強化、患者受入体制の確保、感染防護具の追加備蓄、中小企業や観光産業へのきめ細かな支援など、迅速かつ広範に取組を進めたいと考えております。ご審議のほど、よろしくお願いを申し上げます。
また、東京2020大会に向けたテレワーク及び時差ビズの取組でありますが、ここは感染拡大の防止のためにも、大幅に前倒しをして進めてまいります。都におきましては、本庁職員の全員がテレワークまたはオフピーク通勤を実施をし、「隗より始めよ」で徹底していくとともに、企業等の皆様におかれましても、これを契機にさらに本格的に推進していただきますよう、強くお願いを申し上げます。
事態は新たな局面を迎え、予断を許さないものとなっております。今後とも、国や区市町村、近隣自治体、関係機関と連携をいたしまして、都議会の皆様と力を合わせて、都民の皆様の安全安心を守る対策に、全力を挙げて取り組んでまいります。
さて、今から60年前となります1960年、リハビリテーションの研究のため、一人の若き日本人医師がロンドン郊外の病院を訪れました。彼がそこで目にしたのは、車いすを使用する患者が、バスケットボールに汗を流す姿でありました。その光景に感銘を受けて、我が国における障がい者スポーツの普及に力を尽くしたのが、「日本のパラリンピックの父」と言われる医師、中村裕博士であります。
障がい者は療養すべきとの考え方が主流であった当時の社会におきまして、障がい者とスポーツを結び付ける取組は、大いなる挑戦でございました。国内初の障がい者スポーツ大会を開催し、国際大会にも日本人選手を初めて参加させた博士の情熱により、1964年、パラリンピックの名称が初めて使われた東京パラリンピックの開催が実現いたします。さらに博士は、この大会を機に、障がい者の社会進出を促進するべく、就労施設の設立や企業との連携等に取り組みました。経済成長へと突き進む時代の只中にあって、障がいの有無にかかわらず、誰もが個性や意欲に応じていきいきと活躍し、心豊かに暮らせる社会へと繋がる取組も、着実に進められていたのであります。
東京2020大会を跳躍台とし、「成長」と「成熟」が両立した都市へと、東京のさらなる進化を目指す私たちは、当時のこうした果敢な挑戦を、改めて胸に刻まなければなりません。1964年のパラリンピックが、障がいのある方々が輝く社会への第一歩であったとすれば、今回のパラリンピックは、ハード・ソフトの両面におけるバリアフリーの徹底や、誰もが支え合うソーシャル・インクルージョンの推進など、共生社会に向けた取組を一層前進させるべき大会であります。さらに、先月開催をいたしました「パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」におきまして、谷垣禎一名誉顧問は、「どういう社会を創っていくのか。大会が終わったらおしまいということにさせてはいけない」と述べておられました。大会後も、より良い社会を目指した取組を不断に続けていかなければ、真の成熟社会を実現することは叶いません。
そしてまた、今回の大会は、パラリンピックの価値をさらに高めるべき大会でもあります。パラリンピックは、1964年の東京大会からしばらく、オリンピックと同じ都市で開催されることはありませんでした。再びオリンピックと同都市で開催され、世界の注目がより高まることとなったのは、わずか32年前、1988年のソウル大会以降のことであります。だからこそ、二度目の夏季パラリンピックを開催する初の都市である東京は、万全の準備を整え、アスリートと観客が一体となってかつてない興奮と感動を呼び起こす、世界に語り継がれるパラリンピックを実現しなければならない。そのような、強い想いを抱いております。
2020年、いよいよ、オリンピック・パラリンピックイヤーの到来であります。オリンピックはもとより、パラリンピックを大いなる成功へと導き、東京2020大会を、真に世界に誇る大会とする。2013年の招致決定以降、約7年にわたり、都は総力を挙げてそのための取組に邁進してまいりました。大会準備は、まさに大詰めを迎えております。
今月末、東京アクアティクスセンターの竣工によりまして、都が新たに整備する恒久施設は全て整うこととなります。大会経費の最終的な枠組みも公表されまして、都の負担額は、新たに100億円の緊急対応費を計上する一方で、競歩会場の変更やさらなる精査によりまして5975億円とし、大会関連経費につきましても、7766億円に縮減をいたしました。引き続き、組織委員会及び関係機関と連携しながら、一層の効率化を進めてまいります。
大会の安全安心の確保に向けましては、先般、有明体操競技場などを会場として、災害対応訓練を実施をいたしました。今後も、テロへの対応など、治安対策を加えました各種訓練を継続的に行って、検証を重ねてまいります。感染症対策やサイバーセキュリティを含め、それぞれの分野における具体の対応を明確にした「対処要領」に基づいて、誰もが安心して楽しめる大会の実現に万全を期してまいります。
大会期間中の交通混雑の緩和につきましては、物流における交通需要マネジメントを加速するため、関係機関や業界団体と共に、先月、実行協議会を立ち上げました。現場の実情に即した、中小企業等への呼びかけや相談対応を通じまして、荷主から配送業者まで一体となった取組を促進いたします。先月、都民や企業等の皆様のご協力をいただいた「冬のスムーズビズ実践期間」の検証も踏まえまして、引き続き、混雑の緩和に着実に取り組んでまいります。
大会を文化の面から盛り上げるべく、「Tokyo Tokyo FESTIVAL」の取組も加速いたします。国内外の2千を超える応募の中から選び抜かれた13の特別企画を中核に、都立文化施設におけます展覧会や公演、東京都メディアセンター及びライブサイトにおけます伝統文化の体験など、人々の記憶に残る多彩なプログラムを展開をしてまいります。
パラリンピックの成功と共生社会の実現に向けましては、これまで、130万人を超える方々にご登録いただいている「TEAM BEYOND」をはじめとしたパラスポーツの普及、専門家の知見を踏まえたバリアフリーの推進、ソーシャルファームの創設を促進する条例の制定など、幅広い取組を重ねてまいりました。パラスポーツを間近で体感できるイベントには、毎回多くの参加をいただいておりまして、引き続き競技の魅力を広く発信をしてまいります。
また、大会への関心を高めるパンフレットや、東京2020大会の最終日を飾るパラリンピックマラソンを、東京を挙げて盛り上げるためのリーフレットを、広く配布しております。チケット販売では、ロンドン大会の3倍以上となる39万人が申し込まれた第一次抽選に続きまして、第二次抽選にも24万人を超える申し込みがあり、確かな手応えを感じたところであります。是非とも、満員の観客で沸くパラリンピックを実現し、そして、その盛り上がりを一時のもので終わらせることなく、成熟都市・東京をさらなる高みへと導く取組を推し進めてまいります。
来月にはいよいよ、オリンピックの聖火がギリシャで採火され、宮城県、岩手県、福島県におきまして「復興の火」として展示された後、昨年、全面再開されました福島のJヴィレッジから、全国を巡るリレーへと出発いたします。オリンピックまで156日、パラリンピックまで188日。世界が待ちわびる開幕に向けまして、一日一日、大会準備の総仕上げに全力を尽くしてまいります。そして、2020年の東京が、人々の記憶にいつまでも残り続ける史上最高の大会を、都議会の皆様、都民の皆様と共に、必ずや実現したいと思います。何卒、皆様の一層のお力添えをお願い申し上げます。
オリンピック・パラリンピックを成功へと導き、2020年のその先の、明るい未来を掴み取る。そのための羅針盤として、昨年12月、「『未来の東京』戦略ビジョン」を策定をいたしました。時代を切り拓く「人」が大いに輝ける社会を確立することこそが、東京が未来へと発展を続ける鍵であります。そうした確信の下、「人が輝く」東京をはじめ、「安全安心」、「世界をリードする」、「美しい」、「楽しい」、そして「オールジャパンで進む」東京を創り上げるため、目指すべき2040年代の20の姿を描きました。
誰もが自分らしく、いきいきと活躍する。世界一の高い生産性で、世界経済を牽引する。全国各地との連携を深め、真の共存共栄を実現する。こうした目指すべき姿に向けまして、区市町村や民間企業、NPO等と積極的に連携・協働し、約120の「推進プロジェクト」を迅速かつ強力に展開をいたします。加えまして、東京2020大会のレガシーにつきましても、未来へと着実に結び付けていかなければなりません。これらの取組を、来年度に策定する「長期戦略」へと結実させて、「成長」と「成熟」が両立した、東京・日本の輝かしい未来を果敢に切り拓いてまいります。
都はこれまで、職員主体の「2020改革」を推し進め、情報公開の一層の進展や主要事業の分析・見直しなど、多くの成果を挙げてまいりました。4月には、二つの政策連携団体を統合いたしまして、持続可能な東京水道の実現に向けました取組を加速するなど、引き続き、手を緩めることなく改革に邁進してまいります。
この「2020改革」をさらに発展させ、明るい未来を支える都庁へと一段の飛躍を遂げるべく、先般、「新たな都政改革ビジョン」を公表いたしました。次なる改革で徹底していくのは、都政を取り巻く環境やニーズの変化に、迅速かつ柔軟に対応する「アジャイル」と、都民目線で課題を深く掘り下げ、政策やサービスを不断に練り上げる「デザイン思考」であります。今後、都民の皆様のご意見を踏まえまして、改革の具体策を「実行方針」として取りまとめてまいります。
東京2020大会を確実な成功へと導き、次世代に継承するレガシーを創り上げるとともに、「戦略ビジョン」で描きました未来への力強い一歩を踏み出す。そのための令和2年度当初予算案は、過去最大となった今年度に次ぐ、7兆3540億円の規模で編成をいたしました。未来の東京を創る取組に重点的に予算を配分する一方、徹底した事業評価によりまして1030億円の財源確保へ繋げるなど、引き続きメリハリの効いた予算編成を行ったところであります。
今後、人口減少によります経済縮小や、超高齢化に伴います歳出増が見込まれる中にありまして、「戦略ビジョン」に基づく投資により持続的に成長を生み出すとともに、「改革ビジョン」を踏まえた事業評価の深化などによって、健全な財政運営を進めることが欠かせません。長期的な視点から、より強固で弾力的な財政基盤を確立して、明るい未来の実現を確かなものとしてまいります。
これより、主要な政策について申し述べてまいります。子供からお年寄りまで、また、障がいのある方も外国人の方も、誰もが自らの意思で未来を切り拓く、「人が輝く」東京。その実現に向け、「3つのC」を軸に、力強く施策を推進してまいります。
まずは、次代を担う子供たちを育み、明るい未来を繋いでいく、「Children」の取組についてであります。
「戦略ビジョン」におきましては、目指すべき未来の姿の一つとして、合計特殊出生率「2.07」を掲げました。少子化が進み、社会の活力が低下すれば、明るい未来を展望することはできません。子供を持ちたいという個々人の願いを叶えるとともに、人口減少に歯止めをかけるとの強い決意を胸に、子供たちの笑顔と希望に溢れるまちの実現に邁進してまいります。
新たに始めます「とうきょうママパパ応援事業」では、ベビーシッター等の派遣によります産後の負担軽減や、1歳児のいる家庭への訪問などを通じました育児不安の解消を図ってまいります。併せまして、双子や三つ子等を持つ家庭について、外出時の支援や移動経費の補助を行うなど、多胎児家庭ならではの困難を取り除いてまいります。
就任時より精力的に取り組んでまいりました待機児童対策につきましては、空き定員を活用して1歳児を受け入れる保育所への支援を、認証保育所にも拡大するほか、自然環境を活かした保育を促進するなど、量の確保と質の向上の両面から推進してまいります。
昨年夏に導入いたしました都営大江戸線の子育て応援スペースにつきましては、今月より運行を7編成に拡大をいたしまして、その一部を毎日同じ時刻に運行することで、利便性を向上させました。引き続き、子育てのしやすい環境づくりを率先して進めるとともに、区市町村や企業、大学等と連携した「チーム2.07」ムーブメントを推進し、子供を大切にする社会を創り上げていきたいと思います。
子供たちの主体性を伸ばして、一人ひとりの個性や能力に向き合う、新たな教育モデルの確立を目指してまいります。その鍵となる教育現場のICT化に向けまして、モバイル端末や高速通信網の整備などを進める、「TOKYOスマート・スクール・プロジェクト」を開始をいたします。将来的には、AIやビッグデータといった先端技術を活用して、生徒一人ひとりに最適化された学びの提供など、誰一人取り残さない学校教育の実現を目指してまいります。
私立高校授業料のいわゆる実質無償化につきましては、来年度より、年収約910万円未満の世帯にまで対象を拡大をいたします。また、多子世帯に対しましても、高校授業料の負担軽減を図るべく新たな補助を行うなど、子供たち一人ひとりが安心して学び、大きく育つことができる環境を整えてまいります。
次に、2つ目のCであります「Choju」の取組についてであります。人生100年時代におきましても、誰もがいくつになっても安心していきいきと輝ける長寿社会を実現をし、「Choju」の言葉を、東京を象徴する世界の共通語としていきたいと思います。
高齢者の就業を一層後押しするべく、労働者派遣制度を活用したマッチングや普及啓発イベントをはじめ、総合的な支援を展開する「シニア就業応援プロジェクト」を拡充いたします。セカンドキャリアに踏み出そうとするシニア予備群を対象に新たな支援を開始するなど、意欲ある方々が、自らの希望や適性に応じて活躍できる社会を実現してまいります。
生涯現役で学びを深める都立大学のプレミアム・カレッジには、来年度の受講生募集に対しましても、定員を大きく上回る応募をいただきました。この4月には、今年度受講された方々の2年目の学びとなる「専攻科」を開設するなど、一人ひとりの大いなる学習意欲に応え、充実した学生生活を後押ししてまいります。
超高齢社会におきまして、認知症といかに向き合うかは、極めて重要な課題であります。新たな取組として、認知症サポーターが地域で活動するための仕組みの創設を進め、誰もが暮らしやすい共生社会づくりを推進してまいります。また、健康長寿医療センターが保有する膨大なビッグデータを活用し、AIによる画像診断システムを構築するなど、先端技術を駆使した認知症の早期診断を目指してまいります。
誰もが住み慣れた地域で快適に暮らせる社会を築くためには、移動支援も欠かせません。運行ダイヤや発着地を柔軟に運用するデマンド交通の導入につきまして、区市町村によります実証実験等への支援を開始をいたします。地域におけます公共交通の今後のあり方を見据え、利便性の高いネットワークの形成を推進してまいります。
3つ目のCは、「Community」であります。人の活力は、人と繋がることで、より一層高まります。人に寄り添い、多様性や包摂性に富んだ、活気溢れる成熟社会を実現してまいります。
近年、急増かつ多国籍化している在住外国人との相互理解の促進や、大会のレガシーとしてのボランティア文化の定着など、東京のコミュニティの活性化を担う新たな財団を、10月に設立をいたします。多言語によるワンストップ相談ナビや、「やさしい日本語」の活用促進、ボランティアの希望者と受入団体を繋ぐネットワークの構築など、新財団を軸といたしまして、多様な文化が共生をし、誰もが助け合う社会づくりを加速してまいります。
人が輝く東京を創る観点から、日常生活の基盤であります住宅につきましても、新たな政策を進めます。都営住宅は、住宅のセーフティネットであるとともに、地域が繋がる拠点でもあります。ここに、居住者や近隣の方々が食事をしながら交流する。そんな居場所となる、「東京みんなでサロン」を開設し、コミュニティの活性化や緩やかな見守りの実現に繋げてまいります。また、4月には、老朽マンションの適正管理を図るため、都道府県初となります管理状況の届出制度を開始するほか、新年度早々、これからの住宅政策のあり方につきまして住宅政策審議会に諮問をして、来年末を目途に、新たな「住宅マスタープラン」の策定を目指してまいります。
「3つのC」に加えまして、誰もが自らの個性や能力を発揮し、自分らしく輝ける社会に向けた取組を進めてまいります。
出産や子育て等で離職した女性が、その持てる力を再び社会で発揮できるよう、現在、東京しごとセンターに設置しております「女性しごと応援テラス」を、多摩地域にも拡大をいたします。また、女性の多様な働き方の選択肢を提示し、自らの可能性を発見していただく大規模なイベントを開催するなど、社会で輝きたいと思う女性をしっかりとサポートしてまいります。一方で、企業で働く女性管理職がさらに羽ばたくことができるよう、そのキャリア形成を支援するプログラムを実施をいたします。修了者には、リーダーとして活躍することの魅力を広く発信してもらって、多くの女性のキャリアアップに繋げるなど、女性管理職を支えるとともに、新たに生み出すサイクルを確立してまいります。
先に可決いただきました条例に基づく、ソーシャルファームの創設の促進につきましては、現在、認証基準や支援策の具体化を進めております。就労に困難を抱える方々が活躍できるソーシャルファームの早期の認証に向けまして、スピード感を持って取り組んでまいります。
ソーシャル・インクルージョンの実現は、就労の世界にとどまりません。先週、総合教育会議におきまして、「これからの特別支援教育の在り方」をテーマに議論を交わしました。障がいの有無にかかわらず、誰もが個々のニーズに応じた教育を受けられるよう検討を深めてまいります。また、都立公園では、全ての子供が楽しめるインクルーシブ公園の整備を進めておりまして、来月には、その第一号となる砧公園の遊具広場が完成をいたします。今後、区市町村と連携をしまして、身近な公園にも取組を拡大してまいります。
これまで検討を重ねてまいりました「犯罪被害者等支援条例」につきましては、都民の皆様のご意見を丁寧に伺って、この本定例会に条例案を提案をいたしました。これを契機に、見舞金の給付や、都道府県初となる転居費用の助成といった経済的支援をはじめ、外国人被害者への支援の拡充など、幅広く取組を展開をいたします。被害に遭われた方やその御家族が安心して生活できますよう、寄り添った支援を進めてまいります。
次に、人が輝く大前提となります、安全安心を確保する取組についてであります。
年々激甚化する豪雨災害に鑑み、安全安心の取組を一層推進するべく、先月、新たに「豪雨対策アクションプラン」を策定をいたしました。これに基づき、現在進めている環状七号線地下広域調節池等の整備を着実に推進するほか、河川への監視カメラ設置の拡大や樋門等の施設改良など、昨年の台風を踏まえました対応を図ってまいります。加えて、新たな調節池につきましても、2030年度までに約150万立米の容量の事業化を図るべく、来年度は石神井川と境川で事業に着手してまいります。
また、東京消防庁におきましては、水害時に浸水地域に先行して迅速な救助活動を行う「即応対処部隊」の運用を開始をいたします。陸上滑走が可能なエアボートを、日本の消防機関として初めて導入するなど、毎年のように起こりうる豪雨災害に対しまして、着実に備えを固めてまいります。
防災対策のさらなる進化に向けましては、停電時の電源確保が重要な課題であります。共助の要となる地域コミュニティ拠点に対しまして、発電機等の配備を後押しをするとともに、災害対策本部が設置される区市町村庁舎におけます非常用電源設置のため、経費の補助や専門家の派遣による支援を実施をいたします。また、家庭の防災備蓄の促進に向けました新たなウェブサイトを立ち上げるなど、自助・共助・公助の観点から、取組を幅広く進めてまいります。
阪神・淡路大震災から25年。倒壊した電柱や建物が、避難や救援・復旧の妨げとなり、火災が瞬く間に広がった光景を、今も忘れることはできません。昨年の台風におきましても、災害対策としての重要性が改めて浮き彫りとなりました無電柱化につきまして、いわゆるセンター・コア・エリア内の都道における整備は、概ね完了する見込みとなりました。島しょ地域におけます取組にも着手をいたしまして、区市町村道につきましても、防災に寄与する道路への補助の拡充等によりまして、施策の拡大を図っております。来年度は、新たに「無電柱化加速化戦略(仮称)」を策定をして、区市町村や民間との一層の連携や、整備コストの縮減に向けました技術開発の促進を図りながら、まちの無電柱化を面的に加速してまいります。
燃え広がらないまちづくりをさらに推進すべく、来年度末を目途に、「防災都市づくり推進計画」を改定いたします。先月には、不燃化が進まない無接道建物につきましての柔軟な対応や、木密地域の魅力的な街並みへの再生など、一歩踏み込んだ方向性を掲げた基本方針案をお示しをいたしました。今後、地元自治体と連携いたしまして、具体的な事業の検討を進めてまいります。
また、震災時の救援・復旧を円滑に進めるためには、その生命線となる緊急輸送道路につきまして、沿道建築物の耐震性をさらに高めて、通行機能を確実に確保しなければなりません。特に倒壊の危険性が高い建築物の段階的な改修や、テナントビルの耐震化に向けた支援を拡充するなど、取組をより一層前進させてまいります。
そして、防災まちづくりを強力に推進していくためには、国との連携も欠かせません。先月には、災害に強い都市の形成に向けまして、国と都の実務者会議を新たに設置をいたしました。高台を増やすまちづくりや、木密地域の改善に向けましたさらなる展開など、民間を含めて知見や情報を幅広く共有し、実効性ある対策を講じてまいります。
誰もが安心して、質の高い医療を受けられる東京を実現するべく、「新たな病院運営改革ビジョン」を策定いたします。先般、その素案におきまして、都立病院及び公社病院につきまして、地方独立行政法人化の準備を開始するに至った考え方などをお示しをいたしました。引き続き、都民及び関係者の皆様のご意見や、都議会におけるご議論を踏まえまして、年度末には、病院の今後の運営の道筋を示す本ビジョンを公表をいたします。将来にわたりまして都民の安全安心を支える、効率的かつ効果的な医療提供体制の構築に向けて、全力で取り組んでまいります。
人の安全かつ自由な移動を支えて、東京の活力を引き出す交通ネットワークの充実に向けまして、さらなる取組を進めてまいります。
快適通勤の実現や多摩地域の魅力向上などに繋がる鉄道網の構築については、今般、多摩都市モノレールの箱根ケ崎方面への延伸につきまして、事業化に向けた調査に着手することといたしました。また、地下鉄8号線などの各路線につきましても、「戦略ビジョン」において取組の方向性を示したところでありまして、引き続き、国や地元自治体、鉄道事業者等との協議・調整を加速してまいります。
道路ネットワークの充実に向けましては、東京2020大会におきまして、築地の車両基地と晴海の選手村を結ぶ環状第2号線の地上部道路が、来月28日に開通することとなりました。さらに5月には、臨海部の交通需要の増加に対応する「東京BRT」が、虎ノ門から環状第2号線を経て晴海へと至るルートにおきまして、先行的に運行を開始をいたします。引き続き、2022年度の本線トンネル開通を目指しまして取組を進め、臨海部と都心部を結ぶ新たな道路ネットワークを形成するとともに、円滑な地域交通を確保してまいります。
また、築地のまちづくりにつきましては、本格的な推進に先立って、船着場周辺エリアを先行的に整備をいたします。舟運の活性化を図り、築地場外市場との繋がりにも配慮しながら、具体の実施方針を年度内に公表いたしまして、民間の創意工夫を活かすことで、新たな賑わいを早期に創出してまいります。
東京・日本の国際競争力の向上や、東京2020大会の円滑な実施に資するべく、国は来月下旬より、羽田空港におけます国際線の発着を年間約3万9千回増加いたします。都といたしましては、運用開始後における関係自治体との情報連絡体制を新たに整備をしまして、引き続き、国に対して丁寧な情報提供や騒音・安全対策の着実な実施を求めてまいります。東京の未来にとりまして重要な羽田空港の機能強化に向けまして、都民の皆様の理解がさらに深まるよう取り組んでまいります。
世界中からヒト・モノ・カネ・情報が集まり、次々と新たな産業が生まれる一方で、快適な環境や豊かな緑が、人々にゆとりと潤いをもたらす。そのような世界に誇れる都市・東京を創り上げてまいります。
新たな基幹インフラとなる電波の道、「TOKYO Data Highway」を基盤に、デジタルの力で、東京のポテンシャルを最大限に引き出す「スマート東京」。先般、その実現に向けました「実施戦略」を公表したところでありまして、今後、5つの先行実施エリアにおいて、5Gをはじめとする高速モバイルネットワーク及び先端技術を活用したサービスを展開をいたします。さらに、教育、防災、産業など、幅広い分野におきまして都市のデジタルシフトに向けた施策を推進し、テクノロジーによる都民生活の質の向上を図ってまいります。
スマート東京を実現するためには、旗振り役である都庁自身もデジタル化を進めなければなりません。先端技術によりまして、業務の生産性・効率性を高めるとともに、都民目線に立った行政サービスを提供してまいります。その一環として、AIを活用し、納税者からの相談に24時間365日対応するサービスを実施するほか、恩賜上野動物園で実証実験中のQRコード決済をはじめ、多様なキャッシュレス決済について、多くの方々が来場する都有施設での導入を加速してまいります。
世界経済を牽引する東京を目指し、引き続き、「稼ぐ力」を高める取組を進めます。スタートアップ企業が生み出す製品やサービスは、時代のニーズを機敏に捉え、社会的課題の克服にも寄与します。その力を最大限に活かすことで、企業の成長にも繋げるべく、都とスタートアップの交流拠点を開設し、都政課題の解決に向けた官民によるプロジェクトを促進してまいります。
また、世界へ羽ばたくネクストユニコーンを東京から輩出するべく、シリコンバレーや深圳といった世界有数のエコシステムで開催される商談会や、海外企業を招いた交流会への参加を促して、スタートアップの海外進出を力強く後押しをしてまいります。
我が国の経済は、最新のGDP速報値におきまして、年率換算6.3%という大幅な落ち込みを示しました。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響による景気の停滞も懸念されるところであります。加えまして、人口減少やICT技術の進展など、経営環境の急速な変化にも直面する中小企業につきましては、資金面での支えはもとより、その支援のあり方を大胆に見直すことも必要であります。来年度から新たに、「明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業」及び「中小企業新戦略支援事業」を展開をいたしまして、技術・サービスの高度化により受注拡大を目指す企業や、市場開拓・ICT化などに取り組む業界への支援の充実を図ってまいります。さらに、円滑な事業承継の実現に向けまして、M&Aを活用した第三者承継等を手掛けるファンドを育成するほか、新たなイノベーションを創出する発展的な事業承継を促進するなど、中小企業の持続可能な発展のため、多様な支援を展開をしてまいります。
また、地域の商業活動の拠点であり、コミュニティの核としても重要な商店街の魅力を広く発信するべく、秋頃を目途に「大東京商店街まつり」を開催するなど、地域産業の活性化に向けました取組を幅広く進めてまいります。
昨年9月以降、オーストラリアにおきまして発生した過去最大級の森林火災は、地球温暖化が一因とも指摘をされています。都といたしましは、甚大な被害が発生したことを踏まえて、姉妹友好都市であるニュー・サウス・ウェールズ州に対しまして、災害見舞金を贈呈することとしております。また、我が国におきましても、記録的な猛暑や豪雨に見舞われるなど、気候変動の影響は、私たちの身近な生活領域まで及んで、今、地球環境を取り巻く問題は、歴史的な転換点を迎えていると言わざるを得ません。都民の生命と財産を守り、美しい水、緑、空気を将来へと引き継ぎながら、東京がさらなる発展を遂げていく。そのためのロードマップをまとめました「ゼロエミッション東京戦略」におきまして、私は、実効性のある対策を講じて、都民の皆様と共に、気候危機に正面から立ち向かう「行動」を起こすことを宣言をいたしました。気候変動の緩和策と適応策の総合的な展開を図って、都外におけますCO2削減への貢献や、省エネ・再エネの拡大など、あらゆる分野の取組を進化、加速させ、脱炭素社会を実現してまいります。
国際的な輸入規制を受けまして、廃プラスチックの処理は喫緊に対処すべき課題であります。国内の新たな資源循環のルートの構築に向けました実証事業を行いますほか、産廃処理業者によります破砕設備等の導入を支援をいたしまして、廃プラスチックの適正な処理を促進をしてまいります。
緑豊かで、美しい都市環境を形成する取組も進めてまいります。先週、緑施策の基本方針となります、「緑確保の総合的な方針」及び「都市計画公園・緑地の整備方針」の改定案を公表いたしました。都民の皆様のご意見を踏まえまして、新年度早々に新たな方針を取りまとめまして、区市町村や民間との連携の下で、あらゆる機会を通じて東京全体の緑の確保に取り組んでまいります。
とりわけ、生産緑地の多くが指定期限を迎えます、いわゆる2022年問題への対応は重要な課題でございます。生産緑地を買い取り、福祉農園等として活用する区市の取組を新たに支援をしまして、緑の減少を食い止めてまいります。また、4月には「東京農業アカデミー」を開設し、東京農業を背負って立つ人材の育成を通じまして農地の活用を促進するなど、緑の保全に向けまして幅広く取り組んでまいります。
東京の夜に新たな楽しさと賑わいをもたらすプロジェクションマッピングの活用を促進すべく、本定例会に「屋外広告物条例」の改正案を提案をいたしました。地域ルールに基づく柔軟な実施方法の新設や、公益的なイベントにおけます手続きの緩和等を柱といたしています。都自らも、プロジェクションマッピングを活用したイベントを開催をいたしまして、その裾野の拡大に繋げるとともに、ナイトライフイベントをはじめ新たな観光資源の開発を促進するなど、国内外の旅行者を惹きつける、魅力溢れる東京を創り上げてまいります。
市町村との緊密な連携によりまして、各地の特色を活かしながら、多摩・島しょ地域の賑わいと活力を創出してまいります。大学や研究機関、ハイテク企業等が集積する多摩地域の強みをさらに引き出すべく、6月を目途に、立川に新たな創業支援拠点を開設をいたします。今後、昭島にある産業サポートスクエア・TAMAや、2022年に八王子に開設予定となっております産業交流拠点との連携など、産学官の力を結集をしながら、世界有数のイノベーション先進エリアの確立に向けた取組を進めてまいります。
多摩地域におきまして、職住近接で働くことのできる環境を整備するため、都が民間施設を借り上げて、サテライトオフィスとして提供する新たな取組を進めてまいりす。また、多摩・島しょ地域への観光・レジャーの傍ら、テレワークを行う「ワーケーション」の普及に向けましたモデル事業を行うなど、多様な形でテレワークの一層の拡大を図るとともに、地域のさらなる活性化にも繋げてまいります。
島しょ地域の魅力向上に向けましては、引き続き、11の島の個性を磨き上げ、そのブランド化を図る「東京宝島事業」を展開をいたします。また、東京2020大会を機に東京を訪れる旅行者が、気軽に島しょ地域を訪問できますよう、旅行事業者のツアー販売を支援するなど、東京の島々に多くの賑わいをもたらしていきたいと思います。
その他、臨海部におきまして好評を博しております「TOKYO GLOBAL GATEWAY」と同様の、体験型英語学習施設を多摩地域に整備することを検討するなど、住む人にも訪れる人にも魅力的な地域の実現に向けまして、幅広く取組を推進してまいります。
激化する国際競争に加えまして、このたびの新型コロナウイルス感染症の影響により、世界経済の先行きが不透明さを増す中で、我が国が確実な歩みを続けていくためには、オールジャパンでの連携が欠かせません。全国各地との関係をさらに進化させ、強固な信頼関係の下、東京と各地、そして日本全体の成長・発展を成していきたいと存じます。
例えば、多くの道府県と共に進めております国産木材の活用に向けましては、引き続き、都が保有する建物への木材活用の検討や、木塀の設置等に取り組んでまいります。加えまして、民間の大規模な建物の木造化に対する助成や、多摩産材及び全国の地域材をPRする拠点の整備などを進めてまいります。
また、海外からのインバウンド需要を着実に取り込むため、東京2020大会の期間におきまして全国の特産品を集めた物産展を開催をいたしまして、世界から訪れる旅行者に日本の多様な魅力を伝えてまいります。東京と日本各地を結んで、相互の周遊に繋がる観光ルートの開発も強化するなど、全国と連携しながら、多くの旅行者を魅了し続ける取組を推し進めてまいります。
「私利を追わず公益を図る」との信念の下、旧東京市養育院の初代院長を務めるなど、約600もの社会貢献活動に尽力し、今年、生誕180年を迎えました渋沢栄一翁は、こう語ったと言われております。
「夢なき者は理想なし。理想なき者は信念なし。信念なき者は計画なし。計画なき者は実行なし。実行なき者は成果なし。成果なき者は幸福なし。ゆえに幸福を求むる者は夢なかるべからず。」
夢が無くては、幸福を掴むことはできないと説く、「夢七訓」であります。我が国の経済の地位の低下や、第4次産業革命のうねり、気候変動、人口減少など、東京・日本が歴史的な転換点にある今こそ、この言葉が示すとおり、大いなる夢や理想を掲げ、その実現に向けて叡智を結集しなければ、明るい未来を掴むことはできません。約120年前、「二十世紀の豫言」として新聞に掲載されました未来の予測記事には、電話による海外との通話の実現や、暑さ寒さを調節する機械の発明など、当時としてはまさに夢物語であった姿が描かれました。しかし、それらの多くは、先人たちの智恵と努力により、今日、実現をしております。現実が、やがて夢を超え得ることは、まさしく歴史が証明をしているのであります。
「戦略ビジョン」に掲げた目指すべき未来の実現に向けまして、壁は高くとも、揺るぎない信念を持って、取るべき戦略を練り上げて、一つひとつ成果を挙げていく。これまでの延長線に囚われることなく、果敢な挑戦を積み重ねることこそ、私が掲げた「東京大改革」であり、為すべき改革に力強く邁進をしてまいります。
なお、本定例会には、これまで申し上げましたものを含めまして、予算案38件、条例案49件など、合わせまして109件の議案を提案をいたしております。どうぞよろしくご審議をお願い申し上げます。
最後に、今一度申し上げます。新型コロナウイルス感染症につきましては、先週、都内在住の患者が初めて確認されるなど、感染症拡大防止のための重要な局面を迎えております。都民の皆様の不安を受け止め、正確な情報を発信をしながら、積極果敢な対策をとることこそが、一人ひとりの安全安心に繋がってまいります。より一層の危機感を持って、機動的かつ効果的に具体策を講じてまいります。
また、感染の拡大を防ぐためには、都民の皆様一人ひとりの行動も極めて重要でございます。皆様には、手洗いの励行や咳エチケットなど、基本的な感染症対策に努めていただくことを、改めてお願いをしたいと存じます。都議会の皆様、都民の皆様と一丸となって、何としても感染の拡大を食い止めるとの決意を、ここに改めて申し上げまして、私の施政方針表明を終わらせていただきます。
ご清聴、誠にありがとうございました。
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